Chapter 20
音作りのレシピ集 — 欲しい音から逆引きする
この章のゴール.
「こういう音が欲しい」を、どのエフェクトを・どの順で・どの設定でに翻訳する練習。 10 のレシピはあくまで出発点——各章の仕組みに戻れば、自分の耳で調整できる。
前提: 表記は「エフェクト(章): 主要設定」。Level は常に「バイパスと同じ音量」基準(01 章)。
この章で使う既出の用語(定義は各リンク先). Tone(01 章 6 節)、並列(01 章 4 節)、リリース(02 章 4 節)、プリアンプ(03 章 5 節)、ファズ(05 章 1 節)、スレッショルド(06 章 2 節)、ベース(06 章 6 節)、レシオ(06 章 2 節)、ノイズゲート(07 章 1 節)、エンベロープフィルタ(09 章 2 節)、Depth(10 章 2 節)、Rate(10 章 2 節)、トレモロ(10 章 2 節)、ビブラート(10 章 3 節)、音量(10 章 1 節)、Mix(11 章 1 節)、コーラス(11 章 1 節)、フィードバック(12 章 1 節)、ファンク(13 章 3 節)、ロック(13 章 3 節)、シマー(15 章 3 節)、アンビエント(16 章 6 節)、モジュレーテッドディレイ(16 章 5 節)、Pre-delay(17 章 3 節)、サーフ(17 章 5 節)、スプリングリバーブ(17 章 2 節)、モジュレーテッドリバーブ(17 章 4 節)、フリーズ(18 章 4 節)
レシピ 1: 60s サーフ
- スプリングリバーブ(17 章): Dwell/Mix 高め。「ビシャーン」を恐れない
- トレモロ(10 章): 正弦波、Rate をテンポの 8 分に、Depth 深め
- ギター側: シングルコイル、クリーン、ブリッジ寄りピッキング
- 順: ギター → アンプ(またはトレモロ → リバーブ)。リバーブ → トレモロの順なら残響ごと揺れるヴィンテージ流
レシピ 2: 70s ファンクカッティング
- コンプ(06 章): アタック遅め 20〜30 ms、レシオ 4:1、リリース速め——「パコッ」を残す
- エンベロープフィルタまたはワウ(09 章): Sensitivity を自分のピッキングに合わせる/16 分で浅く踏む
- 順: ワウ/フィルタ → コンプ(フィルタの反応を素の強弱で)またはコンプ → ワウ(動作を安定させる)。両方試す
- ギター側: シングル、リアハーフトーン、右手のミュートが 9 割
レシピ 3: 80s クリーンアルペジオ(シティポップ/The Police)
- コンプ(06 章): 浅く、粒を揃える程度
- コーラス(11 章): Rate 0.4〜0.8 Hz、Depth 深め、できればステレオ
- ディレイ(16 章): 8 分、フィードバック 2〜3 回、ミックス 15 %
- リバーブ(17 章): プレート薄め、Pre-delay 40 ms
- 順: コンプ → コーラス → ディレイ → リバーブ
レシピ 4: ブルースのクランチ
- オーバードライブ(04 章): TS 系、ゲイン 9〜10 時、Level 高め、Tone はアンプに合わせて
- アンプ: クリーン〜クランチ境界。手元のボリュームとピッキングで歪みを操作できる点に合わせる
- リバーブ: スプリング浅め
- 鍵は機材よりダイナミクス——ゲインを上げすぎないこと(04 章)
レシピ 5: 90s オルタナ/グランジ
- 基本: クリーン(バース)⇄ Big Muff 系ファズ(05 章)全開(サビ)の落差そのもの
- Muff の後ろに EQ(08 章): 800 Hz +3 dB でミッドスクープを埋める
- コーラス(11 章)をクリーン側に(Come as You Are)
- 順: ファズ → EQ → コーラス
レシピ 6: U2 / ポストロックのディレイの海
- ディレイ(16 章): タップテンポ + 付点 8 分、フィードバック 4〜5 回、繰り返しは Tone 暗め
- 2 台目ディレイ(あれば): 4 分または 2 拍でうっすら
- リバーブ: ホール、Decay 2 s
- コンプ: 浅め(粒を揃えると繰り返しが整列する)
- 弾き方: 8 分の単音・2 音を淡々と。弾かない 16 分を繰り返しに任せる
レシピ 7: シューゲイザー
- ファズ(05 章): Big Muff 系全開
- リバーブ/ディレイ: ファズの前にも置く(定石破り、01 章・05 章)——残響ごと潰して壁にする
- ピッチ揺れ: アームを握って弾く(マイブラ奏法)、またはビブラート/モジュレーテッドリバーブで代用(10 章・17 章)
- 順の例: リバーブ → ファズ → リバーブ。音量注意
レシピ 8: メタルの刻み
- TS 系(04 章): ゲイン 0・Level 高めでハイゲインアンプ/ディストーションの前へ(低域を整理して締める)
- ノイズゲート(07 章): スレッショルド高め・リリース最速。刻みの隙間を無音に
- EQ(08 章): 刻み用は 250 Hz 前後を少し削るとタイト
- 深さはアンプ側で。ペダルで稼ぎすぎない(相互変調の濁り、04 章)
レシピ 9: アンビエント/ワンマン映画音楽
- ボリュームペダルまたはスウェル系(18 章): アタックを消す
- シマーリバーブ(17 章): Decay 長め、Mix 深め
- グラニュラー/フリーズ(18 章): 和音を保持してその上に重ねる
- モジュレーテッドディレイ(16 章): 2 拍、フィードバック多め
- 順: スウェル → ディレイ → シマー。ギターであることを忘れさせたら成功
レシピ 10: ベースの定番 2 種
- 指弾きの土台: コンプ(06 章。レシオ 3:1、アタック中)→ プリアンプ/EQ(03 章・08 章)。低域はアンプ、輪郭は 800 Hz
- ロック/歪みベース: 並列ボード(19 章)でクリーンと歪みを並走、歪み側はハイパスで低域を守る(歪ませた低域は痩せる)。ミックス 6:4 から
レシピの使い方 — 逆引きの思考法
- 参照音源の「何が」好きかを言葉にする(揺れ?残響の長さ?歪みの密度?アタックの立ち方?)
- その要素を担当する章に戻る(揺れ→10〜14、残響→16〜17、密度→4〜5、アタック→6)
- その章の「勘どころ」を出発点に、1 ツマミずつ(01 章の 3 原則)
- 最後にバンド/ミックスの中で微調整——単体の 100 点よりアンサンブルの 80 点
手を動かす
レシピをつまみに翻訳する
この章のポイント
- レシピは出発点。仕組みの章に戻れる限り、レシピは無限に自作できる
- 定番の骨格: コンプ→歪み→モジュレーション→ディレイ→リバーブ(例外は意図を持って)
- 好みの音の分解: 「何が好きか」→「担当する章」→「勘どころ」→「1 ツマミずつ」
- 単体の 100 点よりアンサンブルの 80 点
→ シリーズはここで完結。シリーズの目次に戻る。