Chapter 07
ノイズゲートとノイズ対策 — 弾いていない時間を設計する
この章のゴール.
ノイズゲートの仕組み(スレッショルドとヒステリシス)と副作用を理解し、 ゲートで消してよいノイズと、発生源で断つべきノイズを区別できるようになること。
この章で使う既出の用語(定義は各リンク先). リリース(02 章 4 節)、倍音(02 章 2 節)、コンプレッサー(06 章 1 節)、サイドチェイン(06 章 5 節)
1. ノイズゲートの仕組み
ノイズゲート(noise gate)はコンプレッサーの裏返しで、スレッショルドより小さい音を通さない(または大きく減衰する)。 演奏中はノイズが演奏音にマスクされて聞こえないから、弾いていない瞬間だけ黙らせれば、体感ノイズは激減する——という発想である。
パラメータはコンプと同族:
- スレッショルド: これ以下を閉じる
- アタック: 開く速さ(速くしないと音の頭が欠ける)
- ホールド/リリース: 閉じるまでの猶予と閉じる速さ(速すぎると余韻がブツ切れ)
- リダクション量: 完全に閉じるか、−20 dB 程度に抑えるか
ヒステリシス — バタつきの防止
閾値が 1 本だと、閾値付近の音量で開閉が高速に繰り返されてバタバタ鳴る(チャタリング)。 まともなゲートは「開く閾値」より「閉じる閾値」を数 dB 低く取る(ヒステリシス)。開いたら少し粘り、閉じたら少し渋る——リレーやサーモスタットと同じ設計である。
2. 副作用 — ゲートは余韻を殺す
ゲートはスレッショルド以下を機械的に切る。つまり、減衰していく音の最後・ハーモニクスの尻尾・フェードアウトも切る。 メタルの刻み(ザクザクの隙間を完全な無音にする)では副作用ごと音楽的な武器になるが、クリーン系・アンビエント系では余韻が不自然に消える。 「深い歪み + 速いリリース = タイト」「浅い設定 + 遅いリリース = 自然」の間で、ジャンルに合わせて選ぶ。
3. どこに入れるか
ノイズの多くは歪み系で増幅されて問題になる。基本は:
- 歪みの後ろ、空間系の前。歪みが持ち上げたノイズを切り、ディレイ/リバーブの余韻はゲートの外に置く(余韻が切られない)
- 4 ケーブル方式のゲート(検出はギター直後の信号で行い、切るのは歪み後)は理想形。検出信号がクリーンなので誤動作が少ない(06 章のサイドチェインと同じ思想)
4. そもそものノイズ対策 — 発生源で断つ
ゲートは「隠す」道具であり、ノイズ自体は減っていない。先に発生源を疑う。
| ノイズ | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| ジー(ハム、50/60 Hz とその倍音) | 電源、グラウンドループ(アースの輪)、シングルコイルの誘導 | 電源を1系統に、DC ケーブルの見直し、ハムバッカー/スタックド PU、体の向き |
| サー(ホワイトノイズ) | 高ゲイン回路の宿命、安物バッファ | ゲイン配分の見直し(前段で稼ぎすぎない)、機材の質 |
| ピー/ザザッ(デジタルノイズ) | スイッチング電源、スマホ、照明 | アイソレート電源(19 章)、距離を取る |
| ガリ | ポット/ジャックの接触 | 接点洗浄、修理 |
| ハウリング | アンプ→ギターの音響帰還 | 立ち位置、ゲインを下げる、ピックアップの蝋漬け |
「ゲートが要るほどのノイズ」はたいてい電源かグラウンドの問題である。19 章(電源とパッチングの実務)とセットで考える。
5. 音作りの勘どころ
- スレッショルドは「弾かずに待つ → ノイズが消えるギリギリまで上げる → 弾いて余韻が切れないか確認」の往復で追い込む
- メタルの刻み用は、スレッショルド高め + リリース最速。ゲートのオンオフをリズムの一部にする(ブリッジミュートの隙間が完全な無音になる快感)
- ゲートを深くかけるほど「弾いた瞬間だけ世界が現れる」感覚になる。ロングトーン主体の曲では浅く
- 「サーが気になるからゲート」で解決した気にならず、ゲイン配分(どの段で増幅しているか)を一度見直す
6. 手を動かす
ゲートの開閉を見る
この章のポイント
- ゲートはコンプの裏返し: 閾値以下を閉じる。ヒステリシスでバタつきを防ぐ
- 副作用は余韻の切断。メタルでは武器、クリーンでは不自然
- 置き場所は「歪みの後ろ・空間系の前」。検出だけクリーン信号で行う 4 ケーブル方式が理想
- ゲートは隠すだけ。発生源(電源・グラウンド・ゲイン配分)を先に断つ