Chapter 20
DFM — 製造できる設計
この章のゴール.
「DRC は通ったのに、メーカから問い合わせが来た」という事態をなくすこと。 DRC が見ていない項目を知り、出図前に自分で潰せるようになること。
この章で使う既出の用語(定義は各リンク先). 出図(01 章 3 節)、OSP(02 章 5 節)、シルク(02 章 1 節)、アニュラリング(03 章 3 節)、エッチング(03 章 1 節)、スルーホール(03 章 3 節)、ルータ(03 章 5 節)、積層プレス(03 章 1 節)、DRC(04 章 1 節)、フットプリント(06 章 1 節)、テンティング(12 章 3 節)、ドリル径(12 章 1 節)、ほぼゼロ(15 章 2 節)
1. DRC と DFM の違い
| DRC | DFM | |
|---|---|---|
| 何をする | 決めたルールに対する違反を検出 | 作りやすさ・歩留まりの観点で問題を検出 |
| 誰が決める | 設計者(ルールを入力する) | 製造側の知見 |
| 通れば | 決めたルールは守れている | 量産で問題が出にくい |
| 限界 | ルールに入れていない項目は見ない | ツールによって項目がまちまち |
DRC が通ったことは、作れることを意味しない。 DRC が見ていない典型的な項目を、この章で潰す。
2. 銅パターンの DFM
| 項目 | 何が問題か | 対策 |
|---|---|---|
| アシッドトラップ(鋭角の入り隅) | 鋭い内角にエッチング液が滞留し、削られすぎる | 内角を 45° 以上に。配線の合流を鋭角にしない |
| 細い首(ネック) | ベタが局所的に細くなり、電流・熱・リターンが破綻 | ベタを流したあと目視。CAD のネックチェック(面の最も細い箇所を探す機能)を使う |
| 孤立した銅 | 浮いた導体がアンテナになる(13 章) | 孤立領域の自動削除を有効に |
| スリバー(極細の銅片) | エッチングで剥がれ、他所に付着して短絡させる | 最小幅ルールを設定。ベタの形を単純に |
| 銅の残り率の偏り | 面ごとに銅量が違うと反りが出る | 空き領域にダミーパターンを入れる(メーカが自動で入れることも) |
| 基板端の銅 | ルータで削られてバリ・剥離(03 章) | 銅から端まで 0.3 mm 以上(V カットは 0.5 mm) |
銅残り率の偏りは、思ったより大きな問題である.
L2 が全面ベタ、L3 が配線だけ、という 4 層基板を考える。 積層プレスの後、銅の多い側と少ない側で収縮が違い、基板が皿状に反る。
反った基板は、実装機が平面として扱えず、 BGA の一部だけが浮くという不良を起こす。
対策は、
- 層構成を上下対称にする(05 章)
- 各層の銅残り率を揃える(30〜70 % に収める、層間の差を 20 % 以内に)
- 空き領域にダミーパターン(電気的には何もしない、銅量を揃えるためだけの模様)を入れる
CAD には銅残り率を表示する機能があることが多い。出図前に見る習慣をつける。
3. 穴とビアの DFM
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| アスペクト比(板厚/ドリル径) | 8:1 以下(12 章) |
| ドリル径の種類を減らす | 種類が多いとドリル交換で工数が増える。5〜8 種類以内に |
| 同じ穴径をライブラリで統一 | ビアはすべて φ0.3 に、など |
| 穴どうしの距離 | 壁が薄すぎると割れる。中心間で径の 2 倍以上、壁 0.3 mm 以上 |
| ビアとパッドの距離 | はんだが流れないよう 0.2 mm 以上、またはテンティング |
| 穴と基板端の距離 | 0.5 mm 以上(削るときに欠ける) |
ドリル径を統一するだけで、価格と納期が改善する.
「この抵抗は φ0.8、こっちのコネクタは φ0.85、あっちは φ0.82」—— ライブラリを寄せ集めると、こうなりがちである。
機能上の必要がないなら、統一する。 ビアは 1 種類、スルーホール部品は 2〜3 種類、これで足りることが多い。 メーカによっては「ドリル径の種類数」が見積り項目に入っている。
4. レジスト・シルクの DFM
| 項目 | 目安 | 破ると |
|---|---|---|
| レジスト開口とパッドの隙間 | 片側 0.05 mm | 開口がパッドを覆う |
| パッド間のレジスト土手 | 0.1 mm 以上 | 印刷できず消える(03 章) |
| シルクとパッドの重なり | 禁止 | はんだが濡れない |
| シルク線幅 / 文字高 | 0.15 mm / 0.8 mm 以上 | 潰れて読めない |
| シルクとレジスト開口の隙間 | 0.1 mm 以上 | インクが開口にはみ出す |
シルクとパッドの重なりは、CAD が自動で逃がしてくれる場合と、 そのまま出力してしまう場合がある。出図データで必ず確認する(22 章)。
5. 外形と面付けの DFM
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 内角の R | ルータの刃の半径が残る(03 章)。R 1 mm 程度を見込む |
| 細長い突起・切り込み | 折れる。強度を確認 |
| V カットは直線のみ | かつ端から端まで貫通する直線 |
| 面付けの余白 | 実装機のレールぶん(片側 3〜5 mm)を確保(23 章) |
| 基準マーク(フィデューシャル) | 面付けパネルに 3 か所、基板に 2〜3 か所(21 章) |
6. メーカとのやり取り
出図後、メーカから来る問い合わせを DR(Design Review) や 技術問い合わせと呼ぶ。 よくある内容と、事前に潰す方法を挙げる。
| 問い合わせの内容 | 事前に潰す方法 |
|---|---|
| 「この線幅は当社の最小を下回ります」 | 製造仕様書を最初に見る(04 章) |
| 「アニュラリングが不足しています」 | 公差を積み上げる(04 章) |
| 「ドリル径 φ0.15 は対応できません」 | 最小穴径を確認 |
| 「基板端に銅があります」 | クリアランスルールに入れる |
| 「レジスト土手が 0.08 mm です」 | 06 章のフットプリント設計時に確認 |
| 「層構成の指定が当社標準にありません」 | 標準構成から選ぶ(05 章) |
| 「銅残り率が層間で大きく違います」 | ダミーパターン |
問い合わせは「悪いこと」ではないが、コストである.
1 往復で 1〜2 日、時差があるメーカなら 2〜3 日。 3 往復すれば 1 週間が消える。
逆に、設計の初期にメーカへ相談するのは非常に有効である。 「この層構成、この線幅、この穴径で作れますか」を着手前に聞けば、 出図後の往復はほぼゼロにできる。10 分のメールが 1 週間を救う。
7. 試作と量産で条件が変わる
| 項目 | 試作 | 量産 |
|---|---|---|
| メーカ | 短納期・小ロットの業者 | 品質・価格重視の業者 |
| 面付け | しないことも多い | 必ずする(23 章) |
| ルールの厳しさ | 緩めでも通ることがある | 量産条件で再確認 |
| 表面処理 | 何でも | 保管期間を考慮(OSP は不利) |
「試作で作れたから量産でも作れる」は成り立たない.
試作業者は多少無理をしてでも通してくれることがある。 量産業者は歩留まりが直接利益に効くので、同じ設計を突き返すことがある。
量産に移す前に、量産メーカの製造仕様書で再チェックする。 これは「量産移行 DR」として工程に組み込むのが望ましい。
公差を積み上げる
パッド径・穴径・各工程の公差を入れると、 アニュラリングが最悪ケースと RSS でどうなるかが出る。 どの公差を締めれば成立するかを探ってほしい。
8. この章のまとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| DRC vs DFM | DRC は「決めたルール」の検査。入れ忘れた項目は見ない |
| 銅 | アシッドトラップ、細い首、孤立銅、スリバー、銅残り率の偏り(反り) |
| 穴 | アスペクト比 8:1、ドリル径の種類を減らす、壁 0.3 mm 以上 |
| レジスト・シルク | 土手 0.1 mm、シルクをパッドに重ねない、線幅 0.15 mm |
| メーカとの往復 | 1 往復 1〜2 日。着手前の相談 10 分でほぼゼロにできる |
| 試作 → 量産 | 条件が変わる。量産メーカの仕様で再チェック |