PCB Artwork 21 · 実装性と検査性 — 部品を載せ、良否を判定できる基板にする

Chapter 21

実装性と検査性 — 部品を載せ、良否を判定できる基板にする

この章のゴール.

基板を「作れる」だけでなく「部品が載り、良否が判定でき、直せる」ものにすること。 リフローという熱の工程で何が起きるかを理解し、 アートワークで防げる不良を防ぐこと。

この章で使う既出の用語(定義は各リンク先). 出図(01 章 3 節)、実装業者(01 章 4 節)、シルク(02 章 1 節)、スルーホール(03 章 3 節)、IPC(04 章 3 節)、マイナス(04 章 4 節)、GND(05 章 3 節)、電源(05 章 3 節)、サーマルパッド(06 章 5 節)、トゥームストーン(06 章 2 節)、ランド(06 章 1 節)、直結(13 章 3 節)、禁止(20 章 4 節)

1. 実装の工程

表面実装(SMT: Surface Mount Technology)の流れを押さえる。

表面実装(SMT)の工程と、アートワークが効くところはんだペースト印刷ステンシル開口部品搭載(マウンタ)部品間隔・基準マークリフローランドの熱容量バランス検査(AOI・ICT)テストポイント後付け・手はんだサーマルリリーフ基板を「作れる」だけでなく、部品が載り、良否が判定でき、直せるものにするリフローという熱の工程で何が起きるかを理解すれば、アートワークで防げる不良が見えてくる
スルーホール部品は、SMT のあとに手はんだかフローはんだで後付けする
段工程アートワークが効くところ
1はんだペースト印刷メタルマスク(ステンシル)の開口設計
2部品搭載(マウンタ)部品間隔、基準マーク、部品の向き
3リフローランドの熱容量バランス、部品の配置
4検査(AOI / X 線 / ICT)部品の見やすさ、テストポイント
5後付け(スルーホール、手はんだ)サーマルリリーフ、作業スペース

2. メタルマスクと、はんだの量

メタルマスク(ステンシル)は、はんだペーストを塗るための金属の板である。 パッドの位置に穴が開いていて、その穴からペーストが基板に転写される。

メタルマスク(ステンシル)と面積比断面開口ステンシル側壁にペーストが残ると転写されない面積比 = LW / (2(L+W)t)0.66 以上でないと転写不良例: 0.3 × 0.8 mm、厚 0.12 mm → 0.91(可)厚 0.15 mm にすると 0.730.25 × 0.6 mm なら 0.59 → 転写不良調整すべき場面QFN のサーマルパッド → 格子状に分割、開口率 50〜70 %(06 章)細ピッチ QFP → 開口をやや小さく / 背の高い部品と混在 → 段付きステンシル
標準は板厚 0.1〜0.15 mm、開口はパッドと 1:1。細ピッチ部品があるなら実装業者と相談する
項目標準
板厚0.1〜0.15 mm(部品の混在具合で決める)
開口パッドと同じか、わずかに小さい(1:1 が基本)

開口を調整すべき場面

場面調整理由
QFN / DFN のサーマルパッド格子状に分割、開口率 50〜70 %全面に塗ると部品が浮く(06 章)
細ピッチ QFP(0.4 mm 以下)開口をやや小さく、または長方形を台形にブリッジ(隣とつながる)防止
大きなコネクタのシェル開口を分割ペースト量の均一化
背の高い部品と小さい部品の混在段付きステンシル(部分的に板厚を変える)必要量が違う

面積比という指標がある。

\[ \text{面積比} = \frac{\text{開口の面積}}{\text{開口の側壁の面積}} = \frac{L \times W}{2(L+W) \times t} \]

これが 0.66 以上でないと、ペーストが側壁に残って基板に転写されない。 細かいパッドでステンシルが厚いと、この条件を割る。

面積比が効くのは 0.4 mm ピッチ以下から.

0.3 × 0.8 mm のパッド、ステンシル厚 0.12 mm なら

$$\text{面積比} = \frac{0.24}{2 \times 1.1 \times 0.12} = 0.91$$

これは大丈夫。しかし厚 0.15 mm にすると 0.73、 パッドが 0.25 × 0.6 mm なら 0.59 で転写不良になる。

細ピッチ部品があるなら、ステンシルを薄くするか段付きにする。 これは実装業者と相談する項目である。

3. リフローで起きること

リフローの温度プロファイル時間温度150 ℃217 ℃(融点)予熱均熱(ソーク)リフロー冷却均熱区間があるのは基板内の温度差をならすためである差が大きすぎればならしきれないアートワークの仕事は、この温度差を作らないことである大きな銅面につながったパッドは温まりにくく、小さなパッドはすぐ温まる(13 章)
鉛フリーはんだの融点は 217 ℃。ピークは 230〜245 ℃、30〜60 s 保持が典型的である

リフロー炉は、基板を温度プロファイルに沿って加熱する。

区間温度目的
予熱常温 → 150 ℃急激な温度差を避け、フラックス(酸化膜を除去してはんだを濡れやすくする薬剤)を活性化
均熱(ソーク)150 → 180 ℃、60〜120 s基板全体の温度を揃える
リフロー(ピーク)220 → 245 ℃、30〜60 sはんだを溶かす(鉛フリーの融点 217 ℃)
冷却降温結晶構造を整える

アートワークがここに効くのは、基板内の温度差を通じてである。

「均熱」の区間が存在する理由.

大きな銅面につながったパッドは温まりにくく、 小さなパッドはすぐ温まる。 この差が大きいと、片方が溶けたときにもう片方がまだ溶けていない。

均熱区間は、この差をならすためにある。 しかし差が大きすぎればならしきれない——そこで不良が出る。

アートワークの仕事は、この差を小さくしておくことである。

トゥームストーン(部品が立つ)

小さなチップ部品(1005 / 0603 メトリック以下)で起きる。

トゥームストーン — 片側だけ先に溶けて部品が立つ左右の熱容量が違う細い接続ベタ直結溶けた側の表面張力で部品が引き起こされる熱容量を揃える両側とも同じ細さでベタにつなぐアートワーク側の対策両側をサーマルリリーフに揃える / 配線幅を揃える / ランドを大きくしすぎない部品の向きを揃える(07 章) / ステンシル開口を対称に
1005(0603 メトリック)以下の小さなチップ部品で起きやすい
原因対策(アートワーク)
左右のランドの熱容量が違う片側だけベタ直結にしない。両側をサーマルリリーフに揃える(13 章)
片側だけ太い配線両側の配線幅を揃える、または両側とも細い接続にする
ランドが大きすぎるIPC の密度レベルを見直す(06 章)
部品の向きがバラバラ同じ向きに揃える(07 章)
ペースト量の左右差ステンシル開口を対称に

その他の不良とアートワーク

不良中身アートワーク側の対策
ブリッジ隣のパッドとつながるパッド間隔、レジスト土手、ステンシル開口の縮小
ボイド接合部の中の空隙サーマルビアを埋める(12 章・18 章)、開口の分割
部品の浮きサーマルパッドのはんだ過多開口率 50〜70 %
未はんだ濡れないパッドにシルクが乗っていないか、面積比、表面処理
マンハッタン現象トゥームストーンの別名上と同じ

4. マウンタ(実装機)のための配慮

マウンタ(実装機)のための配慮搬送レール領域(部品禁止 3〜5 mm)搬送レール領域◎◎基準マーク(フィデューシャル)は対角に基準マーク基板に 2〜3 個マークの寸法φ1 mm 銅+φ3 mm 開口搬送レール領域両端 3〜5 mm 部品禁止部品間隔0.5 mm 以上部品の向き揃える極性表示シルクで明確に基準マークがないと、実装機がそもそも基板を認識できない面付けするならパネルに 3 個、各基板に 2 個
面付けは業者が行うこともある。基板側の 2 個は必ず自分で入れる
項目目安理由
基準マーク(フィデューシャル)基板に 2〜3 個、対角に。φ1 mm の銅の丸+φ3 mm のレジスト開口実装機が基板の位置と傾きを認識する
ローカルフィデューシャル細ピッチ BGA の対角に 2 個局所的な位置補正
搬送レール領域基板の両端 3〜5 mm は部品禁止(面付けなら捨て板側でよい)実装機が掴む場所
部品間隔0.5 mm 以上(背の高い部品は 1 mm 以上)ノズルが当たる
部品の向き揃える速度と品質
極性表示シルクで明確に。1 番ピン、カソード(ダイオードのマイナス側)、+誤実装の防止、検査

基準マークがないと実装できない.

「ないと精度が出ない」ではなく、そもそも実装機が基板を認識できない。 実装業者から真っ先に指摘される項目である。

面付けするなら、パネル全体に 3 個、各基板に 2 個が標準。 面付けは業者が行うことも多いので、基板側の 2 個は必ず自分で入れる。

5. 検査性(DFT: Design For Testability——検査しやすい設計)

検査性(DFT)— 検査の種類と必要なもの検査中身アートワークで必要なことAOI(自動光学検査)カメラで外観を見る部品が隠れない配置・読めるシルクX 線検査BGA の下を透視裏面に重なる部品を避けるICT(インサーキット)針を当てて回路を測るテストポイントフライングプローブ針を動かして測るテストポイント(少数ロット向き)ファンクションテスト動作させるコネクタ・テスト用端子テストポイント: φ0.9〜1.0 mmピッチ 2.54 mm 以上・片面に集約ビア兼用は安いが、テンティングすると使えない量産なら専用テストポイントが確実。業者と早期に決める
基板端から 3 mm 以上、部品から 1 mm 以上離す。両面治具は高価なので片面に集約する
検査中身アートワークで必要なこと
AOI(自動光学検査)カメラで外観を見る部品が隠れない配置、極性マークが見える、シルクが読める
X 線検査BGA の下を透視特になし(ただし裏面に重なる部品があると見づらい)
ICT(インサーキットテスト)針を当てて回路を測るテストポイント
ファンクションテスト動作させるコネクタ、テスト用の端子
フライングプローブ針を動かして測るテストポイント(少数ロット向き)

テストポイント

ICT で針を当てるための、露出した銅のパッドである。

項目目安
径φ0.9〜1.0 mm(露出部)
ピッチ2.54 mm 以上(治具の針が入る)
基板端から3 mm 以上
面できるだけ片面に集約(両面治具は高価)
対象全ネット(理想)、最低でも電源・GND・重要な信号
部品からの距離1 mm 以上(針が部品に当たらない)

ビアをテストポイントに兼用するかどうか.

ビアのランドに針を当てる運用は広く行われている。安く、場所を取らない。

ただし、

量産を前提とするなら、専用のテストポイントを設けるほうが確実である。 少量なら兼用でよい。どちらにするかを、実装業者と早期に決める。

6. 修理性 — 直せる基板

量産では「直さず捨てる」判断もあるが、試作と初期ロットでは修理が必ず発生する。

項目内容
こてが入る空間部品の周囲 1〜2 mm
サーマルリリーフGND ピンを直結にすると、こてで溶けない(13 章)
部品番号のシルク見えないと、どれを交換するか分からない
BGA の周囲リワーク(実装済みの部品を外して付け直す作業)装置のノズルが入る空間(周囲 3 mm 以上)
背の高い部品の位置隣の部品の作業を邪魔しない

リフローとステンシルを見る

パッド寸法とステンシル厚から面積比を計算し、 左右の熱容量の差からトゥームストーンのリスクを表示する。 温度プロファイルとの関係も見られる。

7. この章のまとめ

ポイント内容
ステンシル開口はパッドと 1:1 が基本。面積比 0.66 以上。QFN は開口率 50〜70 %
リフロー均熱区間は温度差をならす区間。差を作らないのがアートワークの仕事
トゥームストーン左右の熱容量を揃える。向きを揃える
基準マーク基板に 2〜3 個。ないと実装できない
搬送レール両端 3〜5 mm は部品禁止
テストポイントφ0.9 mm、ピッチ 2.54 mm、片面に集約。ビア兼用は業者と相談
修理性こてが入る空間、サーマルリリーフ、読めるシルク